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2021年12月15日 (水)

「楷(かいじゅ)の会」会報 第6号

会 報 第  6号
令和3年5月2日


米の社会学


 東畑精一博士は、「米」についての見解を「『米』の諸問題」として「農業総合研究」(昭和25年3月)の臨時増刊に記しています。この内容について、彼は「米の社会学」として後に随想していますので、今回はその内容を紹介します。

 日本では、多くの家庭で麦飯を食べている。しかし、生活水準が上昇すれば、米の飯を食べるはずです。これは確かに生活水準が上昇したからである。しかし、米食をやめて麦食(パン、パスタなど)を摂り、肉を食い、ミルクを飲みだして、また麦食に代わったらこれは生活水準が下がったことになるだろうか。

 西洋人は、パン(麦食)が主食であるが、その他に大きな副食物質の支出があるが、米食は単純に「主食」になるだけでなく副食をも兼ねている。米はたいへん便利な食べ物であり、これだけで人間の必要とするほとんどあらゆる栄養素が含まれている。「握り飯に梅干しさえあれば」といわれたのが理解できる。また、米は食物として最も美味で、最も飽きないものである。

 「自給自足」。これは単なる言葉、フレーズだけにとどまらないで、長い間日本の農業政策を動かしてきた。あらゆるものを犠牲にしても、国民の食物「米」だけは国内で確保されなければならないとされてきた。

 米(水田作)が単一物として、食糧全般たりえることを縁として、日本の小農の自給作物としてこれほど格好の作物はない。彼らは自給体制に閉じこもり、貨幣経済的な訓練から遮断され、「まず米作をやっていれば安心だ」という依存的、依頼的な気分にとらわれている。その意味で「米」は大変なマイナスの効果をもたらすかもしれない。同じ食糧作物でも、畑作では、はじめから流通経済過程に這い入ってきて、多数の作物の中から自己の経営に最も適切なものをせざるを得ない。また、水田においては農民の平均的な手腕の差異がその収穫を左右する程度が少なく、むしろ自然の作用の方が収穫を左右する力が強い。畑作においては、それぞれの農民の持っている技術、技能によって、収穫に大きな差異が生まれてくる。このように、生産量を左右する自然と人間の力のコンビネーションの態様が水田作と畑作とではたいへん違っている。前者は素朴的、自然的であるが、後者は文化的、歴史的である。その意味で、米作は湿っぽく、精神の貧乏の象徴であるが、畑作は明朗さがあり、自由の表現とでも言い現わされる。

 一般に、水田農民は一事に執着的であり、物事について考えることが弱く、広い世間を見ることが少なく、居村の中に眼を光らすことが多い。さらに、水田農民は、自己の故郷に縛り付けられる気持ちを強く持っているので、あらゆる意味でモビリティが弱い。それに対し、畑作農民は自ら考え、自らその腕を磨かなければならないし、磨きがいがある。その意味で競争的でもあれば独立的でもある。

 日本は農地改革を行った。しかし、農民の頭の訓練の機会がない限り、依然として水田農民の様相は変わらない。日本の食料政策、農業政策などについては、見地を新たにして再検討すべきであるし、農村離村、人口の農村への逆流などについても、農民の性格について認識を新たにし、見ることが必要である。


「農業塾」視察研修 令和3年2月13日(土)


 真冬でも、穏やかな天候にめぐまれた中で、「農業塾」の視察研修を行いました。研修先は、(有)寿総合食品(松坂市松崎浦町)と松浦武四郎記念館・生誕地(松阪市小野江町)でした。202102134_20211215222201

 午前中は、(有)寿総合食品で、当時新型コロナウイルス警戒宣言中なので体験学習は中止して、瀧本社長から旬の海産物である「アオサ」についてお話を伺うことにしました。アオサは、2月から4月にかけての当該会社の主流製品で、その生態、加工、流通等について丁寧で分かりやすく説明していただきました。帰り際に「ノリのつくだ煮」をいただき、参加者にとってはたいへんよい記念品となりました。

2021021335  午後は、松浦武四郎に関する研修でした。武四郎の生誕地や記念館を見学するにあたって、まず「松浦武四郎記念館友の会」の会長である飯田秀(まさる)様より、「私の人生と松浦武四郎」というテーマで講演していただきました。

 飯田会長さんの人柄や現在に至るご活躍とともに、また北海道の名付け親としての武四郎の功績や彼への思いを語られました。その後、飯田会長さんの案内で生誕地や記念館を見学しました。

 また、記念館では「武四郎涅槃図の世界」という企画展が開催中であり、武四郎の業績や人物像などについて学習することができました。


【PDF】「楷(かいじゅ)の会」会報第6号
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