楷(かいじゅ)の会会報第11号

会報 第 11号
令和4年8月2日


東畑精一博士と彼の師「シュムペーター」について (その2)


 東畑博士のドイツ留学は昭和3年のことでした。「経済学を身につける」ためにボン大学のシュムペーター教授を訪ねましたが、シュムペーター教授はハーバード大学に行っていてボン大学にはいませんでした。しかし、幸運にも1年前から留学に来ていた中山伊知郎博士(一橋大学名誉教授)がいて、東畑博士は彼に「経済学の初歩から学ぶ」ことができたのでした。翌春、中山博士は日本に帰りましたが、代わりにシュムペーター教授が戻ってきて、講義やゼミナールを受けることができました。

 シュムペーター教授の講義は特有なもので、上着もなしに無造作に壇上に上がり立つが早いかすぐ講義を始めるのである。毎回理路整然とした内容の打ち切りのもので、いつも四つ折りの紙片を手に持っての講義であった。演習の時も講義と同じで教授の独壇場で、学生は何も発言できなかった。学問のことでは教授は非常に厳格であり、「一介の学生としてはたいへん近寄りがたく感じた。」と言っていた。しかし、シュムペーター教授は教室以外では話題が豊かで話術が達者な人の好い人物であったということです。こうして1年が過ぎたころには、博士は「経済学が何であるかが少しわかってきた」のでありました。昭和4年の秋に帰国することになり、その際、教授は東畑博士に「できる限り、自分の勉強、精神の状況を通知してよこすように」言われていたので、博士は日本に帰ってきてもシュムペーター教授と交渉を持っていました。

 シュムペーター教授との深い師弟関係を示すように、東畑博士は、教授に関わった邦訳本を多く出しています。「経済発展の理論」(1937年)、「経済学史」(1950年)、「十大経済学者」(1952年)、「経済分析の歴史」(1955年~1962年)などがありますが、特に、イノベーション(技術革新)や企業家機能による社会形態の変化を著した「資本主義・社会主義・民主主義」(1951年~1952年)は経済分野でたいへん好評を博した本で、盟友中山伊知郎博士と共訳で発表し、日本でも特に成功を収めた本になりました。

 この書は、シュムペーター教授が現代社会に内在する経済学的所要問題に対して、彼なりの分析と解答を与えたもので、「二十世紀の経済学に値するもの」でありました。教授としてはできるだけ読みやすくを意図し、資本主義の社会的経済的変化を明らかにしようとするものでした。教授の40年間の研究の総括でありました。ドイツでは1942年に第1版、1947年に第2版、1950年に少し改定された第3版が出版されていました。


第8回 松阪の偉人たち展


 第8回松阪の偉人たち展が令和4年7月6日~10日までの5日間、松阪市文化財センターで開催されました。今年は8回目になり、今年の対象諸氏は蒲生氏郷、三井高利、竹川竹齊、松浦武四郎、本居宣長、大谷嘉兵衛、東畑精一、原田二郎の8人で、彼らの展示とその遺徳が顕彰されました。私たちの東畑精一顕彰会「楷(かいじゅ)の会」は例年のごとく東畑精一博士の展示を担当しました。

 展示した内容は、「東畑精一博士の略年譜」、「東畑精一博士の家系図」を中心として、彼の活躍や活動の記録を、生い立ち、学校時代、学者としての成果、三重県とのかかわり等に分けて掲示し、それを補完する形で写真や著書、関連書籍を置き、さらに彼の交友関係に関する諸物(掛け軸や置物、賞状など)でした。

 梅雨が明け、蒸し暑い日、雷雨の影響での土砂降りの雨の日、晴天で高温の日などで、展示会としてはあまり天候に恵まれませんでしたが、5日間を通じて400余名もの多くの人たちが見学に来ていただきました。


松阪市後援・農業塾 第11期生の募集


東畑精一顕彰会「楷(かいじゅ)の会」では、松阪市後援の令和4年度農業塾の受講生を募集します。
8月20日締切りですが、定員になり次第募集を終了します。

〇実施場所・時間  松阪農業公園ベルファーム内 実践農場
          毎月第2土曜日 午前9時~12時

〇実施内容  毎月テーマの下で座学(講義)と実習を行います。

〇講師  「楷(かいじゅ)の会」会長 森川茂幸(農学博士)
     「楷(かいじゅ)の会」副会長 藤田育美 

〇受講料  5,000円(1年間)

・募集の詳細、申込書は下記ホームページをご覧ください。

http://itpoweron.cocolog-nifty.com/npo/


【PDF】「楷(かいじゅ)の会」会報第11号
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