「楷(かいじゅ)の会」会報第19号
会報 第 19 号
令和6年8月2日
新渡戸稲造と「農業本論」(その2)
エコノミストとして新渡戸稲造を著名にしたのは、「農業本論」(1898年出版)である。東畑博士は、この本を京都の丸善書店で買った(高校2年生の時)といっています。東畑博士は特に印象に残っているのは、「Ruriology(地方学)」であったそうで、彼はこの本について以下のように述べています。
徳川時代から「地方(ぢかた)」という語があり、それはそれぞれの地方農村の特徴、例えば地方的な習俗の相違や作物栽培の差異などに注目した治政牧民の指針とも言われるべき考え方のことである。「Rurioloy」という言葉は、Ruris(田舎)とLogos(学問)を結びつけたもので、新渡戸博士の「地方学」は、単なる治政の範疇に属する考え方より、もっと近代的なもので、地勢的な考え方のものである。そして「社会学の有要なる事柄を充たすものにして、且つ地方の農業組織に大小の影響を及ぼすものなり」と記していて、農村の地勢学や人々の生態学、習俗人情、政治思想などを論じている。
東畑博士は、「若し、新渡戸博士が『農業本論』を70年後の今日(昭和45年頃)に再び著されたならば、いかがであるか」と考えていた。今日、高度経済成長が日本社会のあらゆる方面を根底から揺さぶっている。とりわけ農村においてそうである。
一つは、農村の伝統的生活意識が崩れつつある。報道がいつも「都市(大都市)」の状況を農村に伝えてくる。農家(特に兼業農家)の出稼ぎの者や主婦、子供たちは、毎日都市と農村を往復する。それによって伝統的な農村の習俗の多くが破られていっている。こういう時代こそ「地方学」の研究に尽力し、「絶を紹(つ)ぎ廃を発するの効、復た収むべからざるものあらむとす。」と、新渡戸博士の「地方学」の必要をアピールすべきである。
もう一つは、新渡戸博士のよく取り上げる「疎居と密居」での問題である。農民離村で農村人口はどんどん減少している。「過疎」のために、残存の人々は苦しみ、それが更に人口の流出を促している。今日まで営々辛苦して築いてきた農山村は、文明を逆行していくような生活形態に陥っていくのである。
Ruriologyは、Rural Sociology(農村社会学)の省略的表現であるとも解される。農村社会学が生まれたのは1910年以降であるので、「農業本論」が出た頃は、思想があっても表現として「農業社会学」はなかった。しかし、「本論」そのものは、日本における農村社会学的思考の先駆としてみなし得る。
Rural Sociologyは、アメリカで1910年頃、セオドール・ルーズベルト大統領時代に生まれた実践的な「地方学」である。当時は、都市興隆の時代で、都会と農村の生活・文化水準の格差が強くなっていた。当時のアメリカ農村では、小学校はOne Room、One Teacher、自動車の便もなく、郵便も配達されなかった。ルーズベルトは、郵便を各戸に配達し、合同小学校を建てるということを実行しようとしていた。その機運に従って、農村社会の研究が高まり、農村社会学が生まれたのである。
今日の日本の農村は、過疎問題にいかなる手を差し伸べるか。多くの人は大都市の過密生活と郊外に注目している。その傍らに過疎生活と文明からの離脱の経路に喘ぎつつあるものを忘れてはならない。「地方学」は、まさに「農村社会学」的使命を発揮しないわけにはいかないだろう。その意味で、新渡戸博士は今日でも生きているし、生きてもらわなければならない。
「東畑記念館」 一般公開 令和6年6月2日開催
令和5年度に東畑記念館の改修工事が完了し、令和6年度から東畑精一顕彰会「楷(かいじゅ)の会」の活動拠点となるとともに、展示・研修施設として利用可能となり、令和6年6月2日(日)に東畑記念館の一般公開を行いました。
公開日には、改修工事に深く関係して頂いた方々、「楷(かいじゅ)の会」の会員、松阪偉人顕彰協議会の人たち等、多くの見学者がありました。展示・公開したものは、リニューアルされた記念館の姿、東畑精一関係資料や今までの「楷(かいじゅ)の会」の活動記録、研修室、改修前にあった展示ケース等でした。
次回の公開日は11月2日(土)の予定です。今回の公開内容に加え、研修・展示館としての活用状況(方法)も考えたものにすることにしたいです。
「緑のカーテンの作り方」講座 (松阪市環境課主催)
令和6年5月18日(土曜日:10時半~12時)、松阪市環境課が主催する「緑のカーテンの育て方」講座を松阪農業公園ベルファームで行いました。
この講座は今年で12回目になり、私たち「楷(かいじゅ)の会」が担当してもう12年も経ったことになります。参加者(今年は12名)には「緑のカーテン」に向く植物(特にニガウリをはじめとしたつる性植物)について、その育て方・栽培の仕方のコツについて説明しました。また、我々の東畑精一顕彰会「楷(かいじゅ)の会」が主催している「松阪市後援・農業塾」で育苗したニガウリの苗を用いて、プランターを利用した「ニガウリの定植」を実践していただきました。
ニガウリの特徴は、葉の切れ込みが深く、明るいグリーン色をしているので、日光をやわらかく遮ってくれて、窓を涼しげに演出してくれるという特徴があります。また、ニガウリの果実は、油いため、てんぷら、酢味噌和えなどに利用できます。
「楷(かいじゅ)の会」会報第19号
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