「楷(かいじゅ)の会」会報第20号
会報 第 20 号
令和6年11月2日
東畑謙三 ~東畑記念館の設計者~
東畑精一博士の弟に謙三がいます。彼は東畑吉之助(父)・芳子(母)の三男として、1902年(明治35年)4月11日に生まれました。高校進学にあたっては、上の兄二人は第八高等学校でしたが、謙三は第三高等学校(京都府立高等女学校出の母芳子の勧め)へ行きました(1920年(大正9年))。謙三は医者を目指して三高で学んでいたが、下宿から三高への通学途中に京都大学があり、新しく建てられたチョコレート色の建物が気にかかっていました。その建物の看板を見ると「建築学教室」となっていて、興味・関心を持ち、建築学科への入学を志望しました。大学進学にあたって、父親に建築をやりたいといったら、「大学まで行って大工になるのか」と言われたというエピソードがあります。
京都大学の建築科を卒業(1926年)後、学者になるため大学院に進学しました。大学院での師は山田五一で、学術雑誌「建築学研究」の執筆編集と、「東洋文化学院京都研究所」の設計(東畑謙三の処女作)を託されました。1931年から1年間、新大阪ホテルの設計で、大阪市の嘱託も務めました。
謙三が結婚したのは、1930年です。妻の博子は岩井産業株式会社(現:双日)の創設者である岩井勝次郎の四女でありました。岩井勝次郎は謙三の独立を促し、支持しました。義父から「産業的な建築すなわち工場建築を勉強してこい」と言われ、謙三も近代建築の基本方向や合理主義の建築をやりたかったので、義父の意見に従いました。また、謙三は独立のためと「工場建築をやる」という覚悟で洋行(エジプト、欧州各地、アメリカなど)をすることにしました。
謙三は、1932年に独立し、東畑建築事務所を開設しました。またその傍らで、京都大学の講師に委嘱され、「建築計画」を教えていました(1948年には大阪大学の講師も委嘱されました)。戦争期(1931年~45年)、謙三は徹底した合理システムによって体制(仕事)の要求にこたえました。美術建築の世界における建築家にはほとんど仕事がない中で、謙三は「工場建築」に生きる覚悟の上で、懸命に15年戦争期を生き抜いたのでした。
戦後、日本社会は急速にアメリカ化し、合理主義の建築の時代になりました。謙三はそのような時代をそのまま受け入れ、建築技師(建築家とは言わなかった)として建築化しました。謙三は建築技師に並行して、いくつかの組織を作りました。不二建設を独立させ、パネル式の組み立て住宅を供給しました。不動産部門として清林社を作りました。東畑建築事務所は、専ら利潤を追求するということではなく、技術を持った人を集め、その技術の知恵を提供して報酬を得るということを経営の基本に運営しました。1964年(昭和39年)には日本建築総合試験所が開設され、謙三はそこの中心的役割を果たすことになりました。すなわち、関西の建築関係の諸団体をまとめ、大阪市、大阪府の協力を得て、建設省、通産省との共管の財団法人を大阪に設置し、20年間副理事長として理事長を補佐したのでした。
東畑謙三は、1998年(平成10年)4月9日、96歳で天寿を全うしましたが、多くの建造物を建築する傍らで、万博(大阪)会場計画委員・建設顧問、沖縄国際海洋博建設顧問、各建築団体の役員、大学(京都大学、大阪大学)の講師として学生の教育など、社会に貢献しつつ、建築界の発展にも寄与しました。
東畑記念館
1971年 東畑謙三先生 設計
2023年 改修工事
工場建築を凝縮した設計となっている。
参考資料:「待てしばしはない 東畑謙三の光跡」(布施修司監修、日刊建設通信社、1995)、「建築技師という生き方 東畑謙三との対話」(東畑謙三研究会編、創元社、2024
松阪市後援 農業塾 ~第12期修了式・第13期開講式~
第12期の最終日(8月10日)は、東畑記念館で修了証書授与式を行いました。修了記念として、元岡山大学副学長で岡山大学名誉教授(法学博士)の岡田雅夫先生に講演(テーマは「法と歴史」をお願いしました。法とは何か(正義である)から、法の歴史的解釈の違いや現在話題になっている夫婦別姓の解釈まで、わかりやすくお話をしていただきました。その後、修了証書授与式を行いました。受講生の修了のお祝いという形で、今年も黄檗皎上月流(煎茶道)家元の岡田皎上月先生のご指導の下、煎茶の野点(平安時代をイメージして)をしていただきました。用いた煎茶は、三重県立明野高等学校で生産・製造した「茶」で、大変美味しく煎れていただき、修了記念に花を添えてもらいました。
農業塾第13期の開校は、9月14日(土)でした。東畑記念館での開講式・オリエンテーションの後、第1回の講座が始まりました。テーマは根菜類で、特にダイコンを取り上げ、その種の採種と栽培管理を学習しました。その後、実践農場(松阪農業公園「ベルファーム」)へ移動し、採種したダイコンの播種をしました。今年も和気あいあいとした受講生の皆さまとともに、1年間充実した農業塾になるようさらに努力を続けていきたいと思います。
東畑記念館 第2回一般公開 11月2日(土)
東畑記念館の第2回一般公開を令和6年11月2日(土)10時~15時に行います。
この機会に新しい東畑記念館をご覧いただきたく、多くのご来館者様をお待ちしております。
「楷(かいじゅ)の会」会報第20号
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