【栽培指針】タマネギ
・タマネギの作型は、秋まきと春まきがあるが、一般には秋まきが行われている。
・秋まきの中で、早生種から中生種を使った青切り栽培を「普通栽培」という。
・普通栽培は、タマネギが十分肥大して最高収量になったときに収穫して、出荷する栽培法で、9月中旬に種まきし、11月中旬に定植する。
・5月下旬頃に収穫し、ふつうすぐに出荷する場合は、収穫と同時に葉を切り取る。
・貯蔵に用いる品種は、晩生でしかも萌芽が遅いものがよいが、仙台黄、山口甲高、平安球型黄などは相当長日にならないと太らないので、暖地では球が太りきらないうちに気温が高くなりすぎて葉が傷んでくる。→泉州系の晩生(例えば淡路二号)がよい。
1栽培の要点
(1)失敗の防止
①とう立ち(抽苔)
・タマネギのとう立ちは冬期の苗の大きさに左右される。→大苗ほど、晩生品種ほどとう立ちの危険性が高い。
・小苗ではとう立ちの心配ないが、球が大きくならないので収量が上がらない。
・6g以上の苗でとう立ちが多くなるので、6g程度の大きさをそろえて植えると生育が早く収量も多くなる。→1割くらいのとう立ちでも結構収量がある。
②苗の植えいたみ
・葉を傷めることは、根を切り取ることより収量に影響する。
・タマネギの植え付けの時期は、地温が低くなってきているので、植え付けが遅れるほど根の発生と伸長が抑えられる。→植え付けの時期をはずさない。
・植え付け時、晴天が続く場合は、うね間にかん水して土壌に十分水分を持たせ、発根を促すようにする。
③病害虫
・べと病の被害が大きい。
・葉の数が多いほど大きい球になるので、葉を病気で傷めないようにする。→春先に1~2回薬剤散布をする。(病気予防)
・貯蔵中のタマネギの腐敗には尻ぐされ型、心ぐされ型、肌ぐされ型の3つの病状がある。
・心ぐされ型→生育末期に現れる病状で、バクテリア、ボトリチス菌、フザリウム菌などの病原菌によって生じ、特にタマネギの連作地帯や雨の多い年などに発生が多い。
・植え付け前に苦土石灰などを10aあたり50kg程度施しておくと効果がある。
・春先の乾燥が多い年はスリップスの発生が多く葉を傷める。
(2)栽培の成功法
①苗
・よい苗→育苗日数55日程度のやや若苗である。苗の大きさが良く揃っている。苗が徒長していない。(根元7mm、長さ25cm、重さ5~6g)。病気にかかっていない。
・タマネギは比較的多肥を好む作物で、特にチッソとリン酸のやり方でタマネギのでき、不できが決まる。
・多収穫をあげるため、チッソを多量に施したり、遅れて多量に肥料を与えると
タマネギの貯蔵性は悪くなる。→球をあまり大きくしない。
・チッソ→多くやりすぎると、他の成分とのバランスがとれなくなり、球の太りを遅らせる。
・植え付け後すぐにチッソを施しても、2月中旬にやっても収量は変わらない。
・3月下旬からの生育にチッソが不足しないようにすればよい。(3月上旬までに2~3回に分けてやり終える)。
・リン酸→根の発育に関係する肥料である。
・根の生育は地上部より先に進むので、2~3月にリン酸の肥効が現れるようにする(元肥で全部入れてしまうか、遅くとも2月までに施す)。
2 栽培の手順
(1)育苗
①種
・タマネギの種は豊凶の差が大きく、不作の年は充実度が悪いので、種の重量が軽い。→充実した種は1リットルで450g程度である。
・タマネギの種は7月採種したものを9月に播く。→1年おいたものは発芽しなくなる。
・100ミリリットルの種数は1万2千粒であり、発芽率を考慮すると10aあたり種の必要量は600ミリリットルである。
②苗床
・苗床は水はけのよい肥えた畑がよい。
・10a当たりの苗を作るには35~50㎡必要で、1㎡1300本の苗を作ることになる。
・種まきする20日前に腐熟堆肥と元肥を入れ、荒起こししておく。
・元肥は苗床10㎡あたりチッソ180~230g、リン酸150~250g、カリ100~150g、石灰100~120g施す。→元肥は油かすなどの有機質のものを主体とし、追肥は液肥をやるとよい。
③種まき
・バラまきとすじまきがあるが、バラまきは均質に播くことが難しい。
・すじまきは5~8cmの間隔ですじをつけ、その溝に5mm間隔で種を落としていく。→厚播きは絶対にしない。
・覆土は良く腐った堆肥と土を混ぜ、ふるいでふるったものを用いるとよい。
・覆土後、腐熟堆肥か切りワラなどを苗床の上にまく。→乾燥を防ぎ、地温を上げ、床土をかためない。
・発芽するまでは敷きわらや寒冷紗などをかけて雨にたたかれないようにする。
④発芽不良の原因
・種が古かったり充実が悪かった。
・覆土が厚すぎると発芽が非常に悪くなるし、芽が出たものでも立ち上がりが遅れる。
・覆土や切りワラが薄すぎるときは、雨などにたたかれて種が現れて死ぬ。
・立枯病にかかり発芽直後に地中で芽が死んでしまう。→苗床が湿りすぎているときに被害が出やすい。
⑤苗床管理
・約1週間で発芽してくるので、敷きワラやカンレイシャは早めに取り除く(夕方にする。)
・発芽後、はじめは生育が遅いので、苗床が乾くようならときどきかん水する。
・早めに除草する。→除草が遅れると苗が草に負けたり、大きな草を抜き取るときに根を傷めたりする。
・発芽後20日くらいになると苗はよく生長するので、このころ土入れをする。→土入れはあらかじめ堆肥と土を混ぜて腐らせ、その中に肥料を少し混ぜた肥土を使う。
→この土を10㎡あたり50~60リットル播いてやると、苗の倒れるのを防ぐとともに、草の生えるのも抑え、追肥にもなる。
⑥苗床でおこる障害
・立枯病→苗が腰折れ状になって倒れる。防除の方法は、土壌消毒か苗床を連続しない。発生したときは、オーソサイド、ダイセン、スミレックスなどの水和剤を散布する。
・タマネギバエ→害虫の代表的なもので、苗の根と茎の間のところに食い込んで苗を枯らす。
・要素欠乏→リン酸不足では苗の葉先が枯れる。
(2)定植
①苗取り
・苗は軟弱なので丁寧に取り扱う。
・苗は大苗と小苗を除いて大きさを揃え、苗取り後すぐに植えるのが望ましい。
→すぐに植えることができない場合は、束にして日陰に置き、濡れ新聞紙などをかけ根の乾燥を防ぐ。
・普通栽培の定植適期は11月中旬である(貯蔵栽培のものは11月下旬~12月上旬でもよい)。
・あまり早植えをすると、苗の立ち直りが早く、年内にいくらか生長するので、大苗を植えたのと同じ結果となりとう立ちを多くする(貯蔵目的のタマネギは、大玉を生産するよりは200g程度の球をつくることを目標とする)。
・畝幅85~90cm、株間12cmの2条植えが標準であるが、貯蔵目的の小ぶりな球の栽培では株間10cmくらいでもよい(4条植えにする場合は畝幅110~120cmとする)
・植え付けではあまり深植えにしないが、砂地ではやや深植えにする。→普通の土壌では1.5cmくらいの深さが適当である。
・植え付けが終わったかん水をして根を落ち着かせる。
②施肥
・元肥はチッソとカリは全体の30~50%を施し、残りを2~3回に分けて追肥する。
・リン酸は冬期分解が遅く、吸収しにくいので、ほとんど元肥に入れるか一部を年内の追肥に回す。
・元肥は一部を耕起前に畑前面にまいて耕し、残りを条肥として10cmくらいの深さのところに施す。
(3)管理
①追肥
・第1回目の追肥は植え付け後3週間くらいのころリン酸追肥全部とカリ、チッソの一部を施す。
・その後の追肥はチッソとカリだけを1月と2月に分けて施す。
・最後の追肥は2月中には終わるようにする。→チッソは遅くなってから多量に施すと球の太りが遅れる。
・追肥はタマネギの条間にやる。
②中耕と除草
・中耕は追肥のときに一緒に行う。
・12月と2月の中耕はタマネギの根を傷めないように軽く行い、土をあまり根元に寄せない。
・3月下旬から4月上旬にかけての最後の中耕は、株元まで十分土をかけ、球のしまりや着色をよくする。
③病害虫防除
・冬期でも白色疫病、黒斑病、べと病、などが発生する。
・特に白色疫病は2~3月、さび病は4月、べと病は4~5月、菌核病や葉枯病は5月に発生が多い。
・時期に合わせ予防的に薬剤散布する。→雨の後に施すと効果が大きい。
④収穫
・球が十分肥大し、倒伏を始めた頃から収穫する。→葉が全部倒伏して葉の青いうちに収穫すると収量も最大になる。
・収穫を遅らせると、葉が枯れて収穫に手間がかかり、球の変形したもの、裂球するものが多く出て品質が悪くなる。
・普通は5月中旬~6月上旬で晴天の日を選んで収穫する。
・引き抜いたタマネギは、畝の上に並べて球を乾かし、出荷するときには球が乾いたころに根と葉を切り捨てる。
・貯蔵するタマネギは、引き抜いて土をよく落とし、半日ぐらい畝の上に並べてよく乾かし、葉付きのまま6~8個ずつ紐で結び、2束ずつ結わえて吊り下げる(傷つきタマネギは傷口から腐敗をおこす細菌が入って軟腐病や肌ぐされを起こす)
・あまり早どりをすると貯蔵中の球の腐敗は少ないが、萌芽が早い。
・遅どりをすると貯蔵中腐敗が多くなるし萌芽も早くなる傾向がある。
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